ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.85 "廣西雅子さんの冬の帽子" "新木秀和さんの腕時計" "神戸智恵子さんによるギャッベ考"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.85 "廣西雅子さんの冬の帽子" "新木秀和さんの腕時計" "神戸智恵子さんによるギャッベ考"

<2015年12月号>

廣西雅子さんの冬の帽子

福岡で帽子の制作をされている廣西雅子さん。
布好きで、気に入った布地を見つけるとついつい衝動買いして、たくさんストックしているそうです。
今回出展していただく冬仕様の帽子は、雅子さんの太鼓判つきのかなり良い生地で作られています。
例えば、フェルトは主に肌触りの良いラビットファーの入ったもの、
パリで買ったグラデーションのウール帽体、
カタチもシンプルで洗練されたデザインにて。
昨夏の企画展では、シゾール、バオー、ペーパーなどの爽やかな素材で出展されましたが、
今回は冬の暖かくて大人のおしゃれを演出する帽子がたくさん登場します。
そもそも自分でかぶりたい帽子がないなら作ってしまおうという精神で帽子作家になられた雅子さんですが、
良い帽子ができると使命を果たした感があり心地よいとおっしゃいます。
アタマのサイズを測ってイージーオーダーも承っております。
ぜひご高覧くださいませ。








新木秀和さんの腕時計

東京・蔵前のアトリエで、腕時計を制作する新木秀和さん。
今まで私が出会った作家さんの多くが、子どものころから絵を描いたり工作したりするのが好きで、その流れで現在ものづくりをしているとおっしゃいます。
新木さんは珍しくそれに該当しません。
中高生の頃から古着が好きで、後に販売員になりました。数年後その店のオーナーの方がアメリカへ行くことになり店を閉めました。
新木さんもアメリカに行こうと、まずは貯金するためにアルバイトを探したところ、渋谷で販売員の求人が出ていました。
それは手作り腕時計の店で、後に新木さんの師匠となる時計作家の先駆け・篠原康治さんの元から独立した多くの時計作家の作品を扱っていたのです。
その店で時計を真剣に選んで買った人がとても大切にしている様子を見るにつけ、この仕事がどんどんおもしろくなっていった。
作り手の顔も買い手の顔も両方知っているということが、ダイレクトに作品の魅力を実感でき心通う接客ができるという。
このことはアメリカのどんな人が作ったかがわからない服を販売するのとは格段楽しさが違っていたのです。
最初は1年バイトして貯まったお金でアメリカに渡る予定が、どういうわけか師匠について時計を作ることを懸命に学び始めていました。
新木さんの作品は、伝統的なつくりで奇をてらったデザインではなく機能性と遊び心を大切に作られています。
時計のベルトはイタリアの上質な革で、本体はステンレスにはない味わいのある真鍮で、文字盤もオリジナリティ豊か。
大好きなヴィンテージの感覚を取り入れた時計は、大好きなヴィンテージの服と相性が良い。
ムーブメントはセイコー社のものを使用しており安心感もあります。
なにより、故障や消耗などにも、きちんと修理をして長くつきあって使い続けられるという良さがあります。
私自身、携帯電話を持つようになってからは腕時計を一切つけないようになりました。
でも、時計をつけるという行為には、時間をみるということだけではなく、スマートな大人のイメージがあります。
もちろん、ファッションとしてのアイテムでもありますが、きちんとした大人のたしなみを感じるのです。
その人がどんな時計を選んで身につけるか、カジュアルで感度の高い新木時計を提案いたします。









神戸智恵子さんによるギャッベ考

神戸智恵子さん主宰の“Tiny Knots”では、神戸さんの眼で厳選されたギャッベやキリムなどが勢ぞろいしています。
gallery ten での企画展は4度め。
年々、ギャッベやキリムに惹かれる方が増えてきているのを実感します。
一度使ってみると離せなくなるほど心地よい暮らしの中の一アイテムです。
これらについては今までも説明してきましたので、今回は、神戸さんのギャッベに対する想いをお伝えいたします。

ただ、ギャッベと暮らしていると、毎日毎日目にして触れ合っているからでしょうか、なんとも言えない安心感をもらっているような気がします。
色・柄さまざまですが、どれも出会って家に連れて帰ったものですので、ペットに近い感覚になってくるのかもしれません。
(そう言えば、たまにギャッベのことを「この子」と言うお客様にお会いします。)
ギャッベの主たる材料となる羊は、ある時は肉となり、ある時は皮や毛で覆うことによって人を守り、何千年もの間 人のために生きてきました。
また人はそんな羊をいつも連れ歩き、財産として絶やすことなく大切に扱ってきたのです。
欧米などではカーペットやラグのない床は裸のようなものと考えられていると何かの本で読んだことがあります。
ただのモノに「らしさ」が与えられるという感じでしょうか。
日本人にはあまりない感覚なのかもしれません。とてもおもしろいですね。
今回は、ギャッベやオールドキリムに加えて部族絨毯と呼ばれるものを出展します。どうぞお楽しみに。






コラム vol.85 "廣西雅子さんの冬の帽子" "新木秀和さんの腕時計" "神戸智恵子さんによるギャッベ考"