ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.54 "かおかおパンダさんと太陽と海と子パンダちゃん" "山崎裕子さんのウツワのチカラ" "チプラスタヂオ・千夏さん"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.54 "かおかおパンダさんと太陽と海と子パンダちゃん" "山崎裕子さんのウツワのチカラ" "チプラスタヂオ・千夏さん"

<2013年5月号>


かおかおパンダさんと太陽と海と子パンダちゃん

数年前、娘が観ていたテレビ番組をチラっと横から見て、ビっ!と目が合った。
トーク番組のスタジオのバックに、惹きつけられる絵が所せましと飾られていました。
即、誰の絵なのかネットで調べ、ついに見つけたのが、今回のかおかおパンダさんでした。
当初、かおかおさんはお子さんの出産を控えている状況で、その後3年を経、今回の展覧会に至りました。

湘南では知らない人がいないほど有名人のかおかおさん。・・・ということを、私はつい最近知りました。
そのエリアのいたるところにかおかおさんの絵が風景や店に溶け込んでいて、実は見ていて気が付かない人もいるのではないでしょうか。
江ノ電の100周年だった2002年、記念して各駅にかおかおさんの看板が掛けられました。
湘南の空気の一部になっていると言えるでしょう。
また、ラジオ出演や地元のイベントなどに引っ張りだこ。
かおかおさんの個展には整理券が必要なくらいお客様が殺到することもあるそうです。

かおかおさんは北海道ご出身。
女子美に在学中、サーフィンにハマって以降、彼女の暮らしに太陽と海がなくてはならないものになりました。
いかにも健康的で、日焼けした褐色の肌に、目力のある瞳、白い歯が輝いています。
鎌倉に十数年住み、時間があったら海、絵を描く、海、絵を描く、・・・の毎日。
現在、2歳の娘さんとの二人暮らし。いつ何時も子パンダちゃん(!)と一緒。
あれだけ忙しいかおかおさん、少しだけ保育園に預け、それ以外はずっと一緒にいて、
仕事がはかどらなかったり大変だったりということのストレスを感じないと明るくおっしゃいます。
「サーフィンは我慢しなければならないけれど、子どもが眠っている夜に仕事すればよいだけ。
愛おしすぎて片時も離れたくない、ずっと見ていたい。」と。
彼女のブログにも常に娘さんが登場し、一心同体の愛情あふれる密着ぶりがうかがえます。
かおかおさんの絵は、彼女の眼に映る太陽の下での鮮やかな色とユニークで温かいキャラクターで構成されています。
その絵により私たちは元気を受け取りますが、かおかおさんは太陽と海と子パンダちゃんから絵の魂を享受しているのだと思います。
今回は、鎌倉から5日間も通ってくださる予定。その間、リクエストに応えてライブ落書きイベントも。楽しいGWになりそうです。


山崎裕子さんのウツワのチカラ



大きな大きな富士山を臨む静岡県朝霧高原は標高700メートル。
雄大な自然環境に恵まれたこの地に、山崎裕子さんのアトリエ兼ご自宅があります。
林に囲まれた広い敷地の中に、山崎さんが懇意にされている建築家の建物。
アトリエの窓からは、庭の桜が見え、この景色を目の前にしながらの制作は気持ちがよいことこの上ないでしょう。

山崎さんは日本大学芸術学部で版画を専攻ののち、岐阜県多治見の工業高校で陶磁科学を学びました。
絵や版画を制作することも楽しいけれど、暮らしの中で身近に使える器を作りたいと思い始めました。
昔からイギリスの伝説の陶芸家・ルーシーリーの作品に魅力を感じ、憧れさえ感じていました。
多治見の学校では、釉薬の研究に打ち込みました。

山崎さんの器は、造形と色彩の得も言われぬ調和が素晴らしいと思います。
色がきれいでもカタチが野暮ったければ興ざめし、また、その逆も言えます。
彼女の器の、流線と直線と肌の質感と厚みと色味が絶妙なバランスで共調しているところに惹かれます。
これはモノに対する生理的に心地よいという、理屈ではない直観的な直感に訴えかけてくるのです。
たとえば、マグカップひとつとってみても、胴体と取っ手の形と付き方のプロポーションがよかったり、
使いづらいと言われがちな色のついた器も、載せる料理を包容する優しさがあります。
また、食卓に、一つきれいな色の器が加わることだけで、ポっとにぎやかで明るい雰囲気を生み出します。
半陶半磁の強くてアジのあるマットな皮膚感も、手にスッとなじんできます。
今回、カップ類だけでも100点近く展開する予定です。ぜひ体感してくださいね。


チプラスタヂオ・千夏さん



京都で鍛造作家のご主人と幼いお子さんと3人家族で暮らす佐々谷千夏さん。
夫婦で“チプラスタヂオ”という屋号で制作をされています。

千夏さんの作品は、錆びた鉄板やワイヤーのオブジェが主で、
シンプルなカタチに鉄の質感が加わり、意図やいやみのない姿でそこはかとない存在感があります。
この何の気なくシンプルなものが、本当は一番難しくて、そのものの本質に迫っているのだと思います。
しかも、“そこはかとなく”という空気のようなニュアンスに大いなる美徳を感じます。

ワイヤーのオブジェを天井から吊るすことで、たちまち命が吹き込まれたかのように空間がイキイキとし始めます。
一つのモノが周囲の空間に影響力をもつインスタレーションとも言える作品です。

用途があるようなないような、でもあったらいいなぁと思える想像力を刺激する鉄作品をどうぞお楽しみに。




コラム vol.54 "かおかおパンダさんと太陽と海と子パンダちゃん" "山崎裕子さんのウツワのチカラ" "チプラスタヂオ・千夏さん"