ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.42 "小泊良さんの作品力" "美ら男(ちゅらお)・宮良耕史郎さん" "DOUCATTYさんのイラストの世界"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.42 "小泊良さんの作品力" "美ら男(ちゅらお)・宮良耕史郎さん" "DOUCATTYさんのイラストの世界"

<2012年5月号>



沖縄特有のセメント屋根

小泊良さんの作品力

沖縄・那覇市にあるギャラリー“よかりよ”さんから時々送られてくるある日のDMの写真にビビッときました。
小泊(こどまり)良さんの個展の案内で、彼のマグカップが3点写っていました。

沖縄は小さな島ですが、縦に長く、車で移動すると南北では結構時間がかかります。
そして、カーナビに住所を入力しようとすると、読み方がわからなくて苦労します。
小泊さんのアトリエは、“今帰仁”と書いて“なきじん”と読みます。
私が宿泊した場所は“読谷村”が”よみたんそん”、
今回のWALL企画のDOUCATTYさんのアトリエは“南風原町字喜屋武”が“はえばるちょうあざきゃん”、・・・。
美ら海水族館から車で20分ほど小高い丘を走って、小泊さんのところへ。
沖縄らしい建築のお宅と南の島らしい庭とアトリエ。
屋根をみると、赤茶の瓦が白いセメントでしっかり固定されているのは、沖縄の強風に耐えるためのつくりなのだそう。
小泊さんの作品は、フォルムが簡素で、色使いがとても魅力的です。
コバルトブルーやエメラルドグリーン、鉄の錆びたような茶色や、黄土色、・・・。これらの色の組み合わせの妙が特徴です。
置いているだけでも絵になりますが、見た目よりもずっと軽く、手にしっくりくる。大きさの感覚がとてもよい。
食器は、使いやすいとか料理を引き立てるとかという機能的要素が大切です。
小泊さんの器は、食事のときだけではなく、食器棚に収納されているときも美しい。二倍得した気分♪

小泊さんは静岡ご出身。
子供のころから絵を描いたりするのが好きで、高校から美術系の学校に進学されました。
その後の進学を、静岡から遠くて新しい大学に行きたいと思い、沖縄県立芸術大学に。
今回、彼と話していて、淡々と自分の世界観の中で作品をつくりだしていくであろう安心感をおぼえました。
作品をどんどん変えていきたいという小泊さん。
これからどんな作品がうまれていくのか楽しみです。

美ら男(ちゅらお)・宮良耕史郎さん

数年前から常設させていただいている木工作家の宮良耕史郎さんの作品。
人気沸騰中のコウシロウさんの小さいスツール(関連展の写真をご参照ください)。カタチがかわいいし、木味もよいし、なんといってもリーズナブル価格!
沖縄のいろいろな樹木の材を使った木の表情が体感できるスツールは、みなさん手で撫でてみたり、香りを嗅いでみたり・・・。
樹種は、クスノキ、センダン、フクギ、ウラジロエノキ、琉球松、・・・。
座ったり、家のコーナーに置いてオブジェや植木鉢を置いたり、何個もお持ちの方もおられます。
作業に使ってくれている友人が二人。
まずは、水墨画家の荒井恵子さん。床に置いた大きな和紙に大きな筆で描く。コウシロウスツールに腰かけて。
また、カフェでお世話になっている“kusa”の姫野博さんは、コーヒー豆を焙煎する時の中腰姿勢の辛さがコレで解消。
スプーンやレンゲ、フォーク、楊枝、・・・などのカトラリーも優れものです。
オイルフィニッシュ等、表面だけをコーティングするのが普通ですが、コウシロウさんのは食用樹脂を木全体に染み込ませてある。
よって、細菌が繁殖しにくく、摩耗の速度も遅い。カトラリーとしては重要なポイントです。

コウシロウさんは、沖縄本島から西に100キロ離れた久米島で制作しておられます。
今回、都合で私の方からは行かれなかったので、逆にコウシロウさんが本島に出向いてくださいました。
約束の日は大シケでフェリーが出ないということで、急きょ飛行機に乗って駆け付けてきてくださいました。
コウシロウさんとは二度目の対面でしたが、いかにも沖縄のオトコマエ顔です。勝手に“美ら男”と命名? 
整った顔立ちとソフトな人あたり。実直で熱いオトコです。
昼間っから、二人でオリオンビールで乾杯し、いろいろ話をしました。
とても研究熱心で、数種類のカトラリーをもっと使いやすくするため、試行錯誤、あれこれ作ってみるそうです。
今後の展望も明確にあり、ますます今後の大発展が期待されます。 フレーフレー!コウシロウ!

DOUCATTYさんのイラストの世界

ある日、ネットでいろいろ遊んでいたら、「おっ。おもしろい!」というサイトにいきつきました。
沖縄で制作されている“DOUCATTY”という田原幸浩さん・田原琴子さんのユニット。
幸浩さんは京都の芸大を卒業後、20年前沖縄に渡り、好きな絵を描きまくるという経歴の持ち主。
奥様でデザイナーの琴子さんは、沖縄芸大卒業後、上京し人気雑誌のエディトリアルデザイナーなど編集のプロフェッショナルだったという経歴。
琴子さんは故郷の沖縄に戻り、お二人は出会い、この地での自由できままな気風の中で創作されているというわけです。。
主にTシャツ、ソックス、手ぬぐいなどを制作しておられるのですが、シュールな絵がたまりません。
かわいらしくなくて、おもしろいのがよい。 このお二人の感性の赴く方向 イコール 私の好み。
見て着て楽しい! 着るだけで元気がモリモリわいてきそうなTシャツです。
メンズ、レディス、キッズのサイズや色展開も豊富で、この夏は大活躍しそうなアイテムです。

先日アトリエにお邪魔して、お茶をいただきながら話をしていたところに、最近家族になったばかりの子猫のタタちゃんが外からドドドっと入ってきました。
なんと口に小さなネズミをくわえていて、ギャー――っ! リュウキュウトガリネズミというとても小さなネズミでした。
どうも、訪問者があると、その人に自慢するかのように何かを捕まえてくるのだそう。私の前の人は、大きな蛾だったとか。
ネズミや蛾はちょっと勘弁願いたいですが、それでもタタちゃんのいじらしい歓迎の儀式は、一生忘れません。

 

コラム vol.42 "小泊良さんの作品力" "美ら男(ちゅらお)・宮良耕史郎さん" "DOUCATTYさんのイラストの世界"