ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.121 "増田良平さんの型" "松永武さんと高井知絵さんの型"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.122 "増田良平さんの型" "松永武さんと高井知絵さんの型"

<2019年3月号>

増田良平さんの型

豊かな原生林や海が広がる沖縄本島の北部・”やんばる”という地域に那覇近くから2年前に引っ越した増田良平さん。
そこには絶滅危惧種の希少で珍しい生き物がたくさんいて、のどかというよりは、ワイルドなイメージ。
その集落では行事や地域の役割など、都会では考えられないような密な繋がりと付き合いがある。
こうして、自分の作陶以外のやらなければならないことが激増して忙しくなり、仕事の時間が限られてきたと言います。
また、お勤めする奥様やお子さんのために、毎日、掃除や食事づくりなど家事もこなす。
良平さんはもともとバリバリ仕事をしたいというタイプではなく、かえって絶対的な”母性”を手に入れたような喜びを感じるのだそう。
今や、冷蔵庫の中の食材をうまく使いきってしまうとうれしいというほど料理がおもしろいのだとか。
そういう意味でも、食器を作るということに新たな魅力を感じて、なんだかとても楽しそうなのです。

良平さんの絵付けは、細かく切り絵にした新聞紙に色土を塗り成形した土に転写し周囲に色土を塗るという手のこんだもの。
筆で描いた方がずっと早いけれど、切紙の型の線や面が独特の絵柄を生む。
また、良平さんの絵の世界観がとてもユニーク。
描かれるモチーフは、やんばるに移ってきてから、自然界の動植物が増えたのかと思いきや、ヒトが多くなったとのこと。
ここでは大海に出て大きな魚を捕ってくる人が一番偉い。
高齢の男性は、日焼けで顔はシワシワだけど、体は筋骨隆々で元気で勇ましい。
作陶している良平さんのことを地元の人たちは、嫁に働かせていつも粘土で遊んでいると思われているとか。
今までの既成概念を覆されるようなこの土地の住民たちに驚きと畏敬の念を覚えずにはいられず、彼らへの関心が高いのでしょう。
”生きる”ことへのたくましさや価値観と向き合いながら、良平さんの創作活動がこれからどんなふうに変化していくのか興味津々。
今回、良平ワールドのいろんなアイテムが勢ぞろいします。お楽しみに!















松永武さんと高井知絵さんの型

東京造形大学のテキスタイルデザイン科で同級生だった松永武さんと高井知絵さんの夫婦ユニット”kata kata”。
二人は大学2年生の時にすでに”kata kata”を結成、学祭でオリジナルの手ぬぐいを作って販売したところ、売れに売れた!
このことをきっかけに、型染めを仕事として生計を立てていくことを意識し始め、卒業後独立して14年が経過、今に至ります。

染めのモチーフは、日々の暮らしの中でピンときたものを作ってみる。
そのもののカタチを長い時間をかけてどんなふうにしようか考えながら頭の中で遊ぶ。
絵にウソがないよう図鑑などで生態を調べつつ生っぽくならないよう、自分たちの線になるようあれこれ発想してみる。
そこにストーリーがあるようにモチーフを組み立てる。
そのできた独創的な図案がなんともユニークで愛着がわくような温かみに満たされています。
思わず「カワイイ!」と口をついて出てしまいます。

今回、型染めだけではなくプリントの作品も展開。
後者は何でも描けるという自由度があり表現の幅も増えますが、
前者は型紙の図案がひとつながりになっていなければならない(切れてバラバラにならないよう)という制約があります。
でも、そんなルールの中で頭を使って作るのがかえって楽しいと言います。
型染めながら”型にはまらない”とでも言うのでしょうか。お二人の染めの世界はパラダイスです!

昨年誕生したお子さん・虎丸くん。 なんでも、それ以降、武さんは虎ばかり作っていると知絵さんが苦笑い。
そんな愛がまた新しい生き生きとしたモチーフを作り出すのでしょう。

















コラム vol.122 "増田良平さんの型、松永武さんと高井知絵さんの型"