ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.112 "小高善和さんの靴の仕事" "田原幸浩さんと琴子さんの染めの仕事"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.112 "小高善和さんの靴の仕事" "田原幸浩さんと琴子さんの染めの仕事"

<2018年4月号>

今展のタイトル“cheers!”は、「乾杯!」という意味の他に、「よぉ!」「おぅ!」「おっす!」「ちぃーす!」と言ったカジュアルな挨拶にも使われます。
小高善和さんの靴、doucatty の手染めの布・・・。 作品⇔使い手の信頼(=モノの確かさ)に基づく親しみをテーマにしました。




小高善和さんの靴の仕事

私の周りでは、小高善和さんが作る靴を愛用している人がどんどん増殖中。
なにより、私自身が1年のうち300日くらいは小高さんの靴を履いています。
ある日のテンの玄関に脱がれた靴のほとんどが小高靴ということもよくあるほどです。
外出時に知らない人から「それ、小高さんの靴ですよね。」と声を掛けられたという話もたまに耳にします。
どんなにヘビロテで使おうが、ソールばかりではなくアッパーの革部分のメンテナンスがなされ、より愛着がわいてくるのです。
小高さんの企画展はテンではおなじみとなり、毎年買い足されていく方も少なくありません。
そのことは、実直かつストイックによりよい靴づくりに邁進する小高さんが日々重ねてきた仕事の賜物なのでしょう。

今回は、小高さんご自身のコメントをご紹介します。(以下)

実は靴をつくる途中で手が止まることが多いです。
履く人のことを考えてのことと、より良いものをつくりたいという気持ちから常に何か良いアイデアを思いつかないか、もっとよくならないかと、
寝ても覚めても頭のどこかでシステムが起動している感じです。
gallery tenの企画展に参加するようになって変わったことは、靴をつくる量がそれ以前に比べ圧倒的に増えたことです。
バックオーダーのプレッシャーが劇的に増えて変わったことで、以前は手が止まりかんがえていたものが、今はつくりながら考えるようになりました。
同じ工程を繰り返すことで一つ一つの作業スピードは上がり、安定感もでますが、
もう一歩深いところの問題にたどり着き、それを解決し、さらに進む、というサイクルを繰り返し今があります。
また、つくりながら考えることで靴以外にも暮らしの中でもっとこうした方がよくなるのでは、と閃くことも多く、
『手が導いてくれる』という師匠の言葉を実感する日々です。

工房で靴づくりのワークショップをやりつつ、自分の作品づくりをする。
また、育児や地域の活動などの役割を果たしながら、少しでも長い時間を仕事に打ち込みたいと葛藤しつつ作品づくりをする。
これらのことは展覧会前後の忙しい時も同じスタンスで行っています。
時には相反する関係を受け止め、咀嚼し、生み出されたものが、今自分がつくっている靴です。








田原幸浩さんと琴子さんの染めの仕事

doucatty・田原幸浩さんと琴子さん、沖縄県南城市で“捺染(なせん)”という技法でひとつひとつ手で布を染めています。
いつも朗らかなお二人が生み出す作品は、おおらかで躍動的で明るくて楽しくて鮮烈でポップで素朴でモダンで・・・
いろんな要素が沖縄の海のように溶け合い輝いています。
手仕事にはいろいろありますが、作者の息遣いまで感じられるような作品を、私たちが常に肌に触れて使えるということ。
それはたまらなく愛着を覚える体験で、味気ないのっぺりとした工業製品を使うのとは大きく違う感覚だと思います。
手ぬぐいやストールの斬新な絵柄やカラーが使う人の気分を和ませたりテンションアップさせたりしてくれます。

田原夫妻にもコメントをいただきましたのでご紹介します。(以下)

自分たちの手で作ること。楽しく作れること。作りながら考えること。考えた時にドキドキすること。自分たちのスタイルで作ること。
手に取ってくれた人に伝わること。作ったものが、誰かの生活とともにあること。自分がほしいものを作ること。

doucatty を立ち上げてから、11年間そう作ってきました。
これからもずっと作っていく人生であるはず。
気持ちいい素材にカラフルな色をしみこませて、今日も作っています。







コラム vol.112 "小高善和さんの靴の仕事" "田原幸浩さんと琴子さんの染めの仕事"