ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.110 "竹村良訓さんのsilence" "藤本健さんのsilence" "西脇一弘さんのsilence"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.110 "竹村良訓さんのsilence" "藤本健さんのsilence" "西脇一弘さんのsilence"

<2018年2月号>

竹村良訓さんのsilence

千葉県松戸市で制作されている竹村良訓さん。
竹村さんは武蔵野美術大学で木工を専攻しましたが、サークル活動で始めた陶芸にどっぷりハマったのだそう。
骨董や音楽など懐古趣味があり、卒業後、東京芸大の大学院で保存修復学科を専攻。

北欧の静かでモダンな工芸品は、昔から普遍的に存在し、それがクラシックにもなりうる。
遠い将来に生きる人が、仮に残在する竹村さんの器を見て、いいなぁと感じられるようなモノを作りたいと言います。
竹村作品は、シンプルな造形に、色とりどりのバリエーションが豊か。
中高生時代は理系人間。今でもその血が騒ぎ、釉薬の研究に余念がない。
同じものが二つとない、ひとつひとつ違う釉掛けを施し、再現性がないところに面白さを感じるとのこと。

今や、竹村さんは国内のみならず海外でも活躍の場を広げていて、寝る時間を削って休みなくアトリエにこもっています。
疲労を見せず、果敢に淡々と一点モノを生み出し続ける美しい作品をご高覧ください。





藤本健さんのsilence

沖縄県南城市で制作されている藤本健さん。
セルフビルドで建てられた無垢の木と漆喰の感度の高いご自宅とアトリエ・ショールーム。

藤本さんの彫刻のような美しいフォルムの木の器は、全て沖縄の雑木で作られています。
ふつう木工は、乾燥材を加工していくのが王道ですが、藤本さんは生木の塊を轆轤挽きします。
乾燥材なら挽いた形がそのまま完成品ですが、生木だとそうはいきません。
静かに静かに歪んだり割れが入ったり、加工したものが自然に還っていくように変化していく。
彼が使うアカギ、ガジュマル、ホルトノキなどの沖縄の樹種は、南国ならではの質感や木目がおもしろい。
藤本さんには、木の声が聞こえているのではないでしょうか。
素材そのものを最大限に生かしているが、素朴で野暮ったいものではない。ミニマルでありながらとてもモダン。
加工の手の加え方が絶妙なのだと思います。
観察をするようにいろんな角度から見て触ってみてください。




西脇一弘さんのsilence

神奈川県座間市で制作されている西脇一弘さん。
アトリエには何もなく真っ白で、雑念を取り払い、一心に絵を描くのだそうです。

アクリルとペンキで描かれた何とも言えない物憂げな人の絵に心奪われます。
一度見たら忘れられなくなる、静かながら強烈な絵。
西脇さんは、何かの”言葉”をきっかけに、そこからイメージを膨らませどんどん描き進めていくとのこと。

フランスのアニメ『ベルヴィル・ランデヴー』がお好き。
それらを髣髴とさせる鉛筆画も今回はたくさん登場します。

西脇さんは絵を描くより前から”sakana”というバンドで音楽活動もされています。
今会期中、西脇さんの楽曲をBGMでお楽しみいただきます。ぜひ作品を観ながら耳を傾けてみてくださいね。








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