ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.108 "山岸厚夫さんの漆器" "高木浩二さんの陶器"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.108 "山岸厚夫さんの漆器" "高木浩二さんの陶器"

<2017年12月号>



山岸厚夫さんの漆器

福井県鯖江の山岸厚夫さんのアトリエを訪ねました。
越前塗りの仕事を30年以上続けてこられた大ベテランの厚夫さん。
私は20年近く山岸さんの漆器を愛用しているのですが、以前に山岸さんに企画展でお世話になって以来5年以上ぶりの再会。
今展の依頼をするまで全く知らずにいたのですが、2年半ほど前に脳出血で倒れ、その後右半身に麻痺が出て制作ができなくなっておられたのでした。
ご子息の芳次さんとずっと一緒に制作されていたので、それ以降は彼が支えてこられました。
バイタリティあふれ、明るく朗らかだった厚夫さんは、大病の後は気持ちがふさがることが多く、家族のみなさんもご心配されてきました。
しかし、ここにきて、厚夫さんは左手に刷毛を持ち、漆に顔料を混ぜパネルに迫力のある絵を描き始められました。
奥様がおっしゃるには、以前にも増して気迫が感じられるとのこと。
厚夫さんの培ってこられた経験や知識を超え、どん底から這い上がったパワーが内側からみなぎっているのです。
今回は、その大作も出展していただくことになりました。

漆器は、成形したり布着せをした木地に、塗り乾かし研ぎ塗り乾かし研ぎ・・・の気の遠くなるような作業が繰り返され作られていきます。
漆と言うと、扱いづらいとか傷がつきやすいとか高価で手が出ないというイメージをお持ちの方も少なくないかと思います。
山岸さんの作品は『ジーンズ感覚の漆器』とうたい、漆を塗り上げた後に表面を研ぎ漆をすり込み艶消しすることで、
漆器を使い古した雰囲気にし、気軽に日常使いができるのが特徴でもあります。
海外など乾燥した地域で使っているうちに稀に木地が縮んで漆にヒビが入ってしまうことがあるそうです。
”木合(もくごう)”という、木の粉と樹脂を型で出したものに漆を塗っていくシリーズは、狂いのない木地を量産できコストを抑えることができます。
漆器が焼き物と同様の価格で買えるのはうれしいですね。
もちろん無垢の木地のアイテムもたくさん出展されます。
長く使っていくうちにツヤや味わいが出てきます。
漆器の手触り、口触りを楽しみ、愛着を持って長く長くお使いください。











高木浩二さんの陶器

高木さんとは長いお付き合いです。
昔から全く変わりなく、いつも穏やかで飄々としていらっしゃいます。

高木さんの陶器は、成形したものに、緩い土をパッティングして景色を出す”彩泥”という手法が使われています。
ベージュ、グレー、アイボリーなどの大理石のような肌には何とも言えない風情があり、控えめながら存在感のある器。
シンプルで魅力ある器は、たくさんありそうでそれほどないものです。
奇を衒わず凛とした佇まい。これは高木さんご本人にも作品にも言えることだと思います。
盛った料理を引き立てるだけではなく、品格まで高める魔法の器です。

高木さんの器のファンの方は多いと思います。
また、ここ数年の間だけでも、アンダーズ東京、マンダリンホテル、アマンリゾート、リッツカールトン、グランドハイアット、ハイアットリージェンシー、・・・・・
外資系ホテルのレストランから続々と器の注文が殺到。
高木さんの器は、料理の和洋を問わず受け入れますが、やはりどこかに誇り高き”日本”らしさが存在しているのでしょう。

11月28日には、山岸さんと高木さんの器を使って、料理研究家・林幸子さんによる食事会を予定しています。
カンタンお節料理やハレの日のカジュアル料理を、重箱や鉢や皿に盛りつけてみましょう。
ちょっとした盛り付けのコツで、いつものごはんがより美味しく美しく見えるというためになるレクチャーの後、お料理をいただきます。
この日は、山岸さん、高木さんもご一緒に、いろんな楽しいお話が飛び交うことと思います。
ぜひご参加くださいね。









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