ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.107 "さとうしのぶさんの線" "関昌生さんの線" "熊本充子さんの線"

ギャラリーテン/gallery ten〜コラム vol.107 "さとうしのぶさんの線" "関昌生さんの線" "熊本充子さんの線"

<2017年11月号>

さとうしのぶさんの線

さとうしのぶさんの作品は、潔い線、何気ない色遣い、作為の感じられない構図など、シンプルな中のバランスが小気味よい。
今展のテーマは”線”ですが、しのぶさんの描くラインは、優しく大らかで、思わずホッとさせられます。
しのぶさんは、ご自分の作品の制作、版画教室主宰に加えて、知的障害者施設でボランティアで指導されています。
彼らの奔放な作品を心から愛し、それらがいかにすばらしいかをずっと見守りサポート。
しのぶさんは確かな技術や知識を持ち合わせていますが、作品は、どこか子どもが描くような自由さに満ちています。
だからこそ、一つの作品からどんどん想像がふくらんでいき、鑑賞している人の中にじわじわと入りこんでいくのだと思います。

数年前にご主人が他界され、それ以降、いろんなお寺で掃除や座禅で修行を重ねておられます。
そのことが心をニュートラルに保ち、自身の芯を支える助けになるのだそうです。
お酒が好きでほがらかなしのぶさんですが、”奉仕”の精神により自他を癒しているのだと感じます。
心安らかに描かれる作品は、こちらまで心安らかにしてくれる。アートセラピー体験をしてみませんか。





関昌生さんの線

福岡県うきはで”四月の魚”という店を営む関昌生さん。
店には骨董から現代作家のものまで、関さんの審美眼にかなったものが並びます。
店番をしながら、ワイヤーをペンチで器用につなげたり曲げたりしながらオブジェを制作。
gallery ten の企画展で、関さんには何度もお世話になっていますが、何度見ても感心させられるのが、線の美しさです。
それは、迷いのない直線であり、優しい曲線であり、また線と線を繊細に実直につなげた線である。
作品は、思わず笑みがこぼれるようなユルいもの、幾何学的で哲学さえ感じられるようなもの、
関さんの中に秘められた造形感覚は、とても洗練されていてユニークだ。

毎回送られてくる梱包はパズルのようにビシっと詰められている。空間認識力が高い証拠だ。
一本一本の線の組み合わせから成る絶妙なカタチの立体をお楽しみください。
ドプリントのストールやバッグを味わってみてくださいね。




熊本充子さんの線

愛知県瀬戸で制作する熊本充子さん。
充子さんの器に描かれている男子が好きそうなブルドーザー、飛行機、自動車、電柱、・・・などのモチーフが魅力絶大!
リアルに描かれた濃紺の絵の器の裏側にも、それと関連した小さい絵があり、遊び心にもあふれています。
例えば、ブルドーザーの絵の裏側には、工事現場でよく見る三角コーン、飛行機の裏側は双眼鏡などなど・・・。
これらの絵柄は筆で描かれているのではなく、”線象嵌(ぞうがん)”という技法が用いられています。
先の尖ったニードルのようなもので素地に溝を彫りながら描き、そこに顔料を入れるという手間のかかる作業。
いかに細い筆で繊細に描いたものでも、この線象嵌で描かれた硬くて細い線にはならない。
たしかに充子さんの描く重機や乗り物は、この線でなければ活かされないなぁと思うほど。
充子さんは仕事をする際に、日常の食事を大切にしています。
忙しいとカップラーメンを・・・ということになりがちですが、手作りしたお弁当を食べることで自分の心と体がなんとなく整えられるのだそうです。
誠実な人柄が彼女の器の絵に反映されているような気がします。 ぜひご高覧くださいね。
ひご相談くださいませ。








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